当院は、医療の安全を守り、患者さんの信頼を得るために、平成21年5月1日より医療安全管理室を設置して、医療安全に努めております。
医療安全は医療の質に関わる重要な課題です。患者さんの安全を第一優先に考えて、職員の1人ひとりが安全な医療を自分自身の課題として認識して安全管理体制の確立と安全な医療の徹底を図ることが出来るよう活動しています。
◆医療安全指針の目的◆
この指針は、医療事故の予防及び再発防止対策並びに発生時の適切な対応など済生会御所病院における医療安全体制を確立し、職員一人ひとりが職業倫理及び医療倫理に基づき、適切かつ安全で質の高い医療サービスの提供を図ることを目的とする。
◆医療安全に関する基本的な考え方◆
1.医療事故の現状認識
近年における医療事故紛争は、患者の権利意識の高揚や医療の高度化・複雑化等により増加傾向にある。
そのため、医療の安全確保の観点から、医療事故の予防及び再発防止対策を推進することはきわめて重要な取り組みである。
2.医療安全に関する基本姿勢
患者に信頼される安全で良質の医療サービスの提供並びに医療の質の向上を求めていくことを基本姿勢とする。
また、医療安全活動においては、医療事故を起こした個人の責任を追及するのではなく、医療事故を発生させた安全管理システムの不備や不十分な点に注目し、その根本原因を究明し、改善していくことを組織的に取り組むものとする。
3.医療安全管理の具体的な推進指針
(1)安全管理体制の構築
医療事故並びに事故発生時の緊急対応について、院内全体が有機的に機能するシステムとして整え、一元的で効率的な安全管理体制を構築する。
(2)医療安全管理のための院内報告制度
医療安全意識の醸成と具体的な予防及び再発防止策に資するため、医療事故やインシデントの情報収集、分析、評価、対策立案を的確に行う体制を構築する。
(3)職員に対する安全教育及び研修の確立
医療安全に関する基本的な考え方や個別事案に対する予防及び再発防止策の周知徹底のため、職員全体を対象にした教育及び研修を計画的に実施する。
(4)医療事故発生時の対応方法の確立
医療事故発生時には、患者の安全を最優先するとともに、医療事故の再発防止策を早期に検討し、職員への周知徹底を図る。
◆用語の定義◆
1.医療事故
医療に関わる場所で、医療従事者の過誤、過失の有無を問わず、医療の全過程において発生するすべての人身事故で、以下の場合を含む。
・死亡、生命の危機、病状の悪化等の身体的被害及び苦痛、不安等の精神的被害が生じた場合。
・患者が廊下で転倒し、負傷した事例のように、医療行為とは直接関係しない場合。
・患者についてだけでなく、注射針の誤針のように、医療従事者に被害が生じた場合。
2.医療過誤
医療事故の一類型であって、医療従事者が医療の遂行において、医療的準則に違反して患者に被害を発生させた行為。
3.過失
行為の違法性、すなわち客観的注意義務違反をいう。
4.ヒヤリ・ハット事例
患者に被害を及ぼすことがなかったが、日常診療の現場で、「ヒヤリ」としたり、「ハット」とした体験を有する事例で、次のような行為等をいう。
・ある医療行為が患者には実施されなかったが、仮に実施されたとすれば何らかの被害が予測される場合。
・ある医療行為が患者には実施されたが、結果的に被害がなかった場合。
5.アクシデントとインシデント
「アクシデント」は、通常、医療事故に相当する用語として用い、同義として「事故」を用いる。
「インシデント」は、同義として「ヒヤリ・ハット」を用いる。
6.患者影響レベル
レベル1:ミスをしたが、患者への実害なし。ただ、心情面で配慮が必要。
レベル2:事故が生じたが治療の必要なし。観察が必要。
レベル3:事故により傷害が発生。治療が必要。
レベル4:事故により傷害が発生。治療を行ったが重大な後遺症有り。
レベル5:事故により死亡。
◆医療安全管理のための体制に関する基本的項目◆
医療事故防止並びに事故発生時の緊急対応について、院内全体が有機的に機能し、一元的で効率的な安全管理体制を構築することで、安全かつ適切な医療サービスの提供を図る。
(1)医療安全管理委員会の設置
副院長、診療部長、看護部長、副看護部長、師長、コメディカルの部長などで構成される委員会で、医療事故防止策の検討、医療事故防止のために行う提言、職員に対する指示、啓発、教育、広報などの協議を行う会で、月1回開催するものとする。
ただし、必要に応じて臨時会議を開催する。
(2)医療安全管理者の配置
医療安全管理について組織横断的立場で調整を図り、医療安全管理活動を推進するために、医療安全管理者(専従)を配置する。
(3)職員の責務
職員は、病院の機構や体制及び医療法規を熟知するとともに、業務の遂行にあたっては、常に患者への医療、看護の実施等、医療機器の取扱いなど、医療事故の発生を防止するよう細心の注意を払わなければならない。
◆医療安全のための院内報告制度◆
(1)委員会は医療事故の予防、再発防止に資するため、インシデント・アクシデントの報告を制度化し、その収集を促進する。
(2)インシデント・アクシデントレポート事例を体験あるいは発見した医療従事者は、その概要をインシデント・アクシデントレポートに記載し、翌日までに所属部署の責任者に報告する。
(3)所属部署の責任者は提出されたインシデント・アクシデントレポートを院長に報告する。
(4)インシデント・アクシデントレポートを提出した者あるいは体験した者に対し、報告提出を理由に不利益な処分を行わない。
(5)委員会はインシデント・アクシデントレポートから院内に潜むシステム自体のエラー発生要因を把握し、リスクの重大性、リスク予測の可否、システム改善の必要性等の分析・評価を行う。
(6)委員会は上記の分析・評価に基づき、適切な事故予防策並びに再発防止策を立案し、実施する。
(7)インシデント・アクシデントレポートは原則として、医療安全管理室において、1年間保管する。
報告基準
a.緊急報告:レベル3、4、5
・事故発見者は職場責任者を通じて直ちに医療安全管理委員会委員長に報告する。
・職場責任者に速やかに連絡する。
・事故報告書は発生当日に作成する。
・4に関して直に 院長に報告し、事故対策委員会を開催する。
・レベル5の場合は院長に報告し、院長の判断にて警察へ報告し(直ちに、もしくは24時間以内)、事故対策委員会を開催する。
b.事故報告:レベル2、投薬・注射によるレベル1
・事故発見者は職場責任者を通じて事故対策委員会に事故報告書にて発生日を含む2日以内に届け出る。
・時間外等で責任者不在時はその任を託された者が行う。
◆職員に対する安全教育及び研修の実施◆
(1)職員研修の定期的開催
委員会は、医療安全管理に関する基本的な指針や医療事故防止及び再発防止に関わる方策を職員に周知徹底するとともに、医療事故発生時の情報収集など緊急事態の対応への習熟を目的とした職員研修及び訓練を計画的に(年2回)開催する。
(2)実施記録
委員会は、医療安全に関わる職員研修の実施内容を記録するものとし、その保管は医療安全管理室で行う。
◆医療事故発生時の対応に関する基本方針◆
(1)第一に患者の生命及び健康と安全を最優先に考え行動する。
(2)ご家族への連絡及び説明は速やかに主治医もしくは当該科の責任医師が率直に事実を話す。
(3)事故の状況は記録方式を経時的に変え、事実のみを客観的かつ正確に記録する。また、事故の状況や説明内容、その時の家族の反応は詳細に記録する。(4)当事者は当該部署の所属長へ報告する。そして、所属長は直ちに上司に報告する。医療安全管理室は報告を受けた事項について委員会に報告する。
(5)医療過誤によって死亡又は重大な傷害が発生した場合またはその疑いがある場合には、事務部長は院長の指示を仰ぎ、速やかに所轄警察署及び保健所に届出をし、済生会支部及び本部へも報告を行う。
(6)事故が発生した場合は、速やかに事故原因の究明、今後の対策等を検討するため、医療事故調査委員会を院内に設置する。医療事故調査委員会は医療安全管理委員会の構成員に加え、関係部署の所属長を加えて構成し、副院長が招集する。また、必要に応じて、外部の専門家を加え、客観的な判断を加えることに努める。
◆医療事故発生時の対応◆
(1)救急処置
医療事故が発生した場合、まず患者に対して可能な限り救急処置を行う。引き続き、多くのスタッフを呼び集め、最善の処置を施す。当事者は気が動転していることが多いので、必ず周囲の医師、看護師の応援を求め、救急処置を行うことが重要である。
(2)医療事故の報告
・医療事故が発生した場合は、次の通り直に上司に報告する。
当事者→所属長→医療安全管理者→部長→副院長→病院長
・施設内における報告の方法
報告は文書にて行う。ただし、緊急を要する場合は直に口頭で報告し、文書による報告を速やかに行う。なお、文書の記載は、事故発生の直接の原因となった当事者が明確な場合は当該本人。その他の者が事故を発見した場合は発見者が行う。
・医療事故報告書は原則として記載日の翌日から起算して1年間保管する。
(3)患者さん・ご家族への対応
・患者さんに対しては誠心誠意治療に専念するとともに、患者さん及びご家族に対しては、誠意をもって事故の説明等を行う。
・患者さん及びご家族に対する事故の説明等は、原則として事故を起こした担当医又は看護師等その上司が同席して対応する。
(4)事実経過の記録
・医師及び看護師等は患者さんの状況、処置の方法、患者さん及びご家族への説明内容を診療録及び看護記録等に詳細に記載する。
・記録にあたっては具体的に以下の事項に留意する。
a.初期対応が終了次第、速やかに記載すること。
b.事故の種類、患者さんの状況に応じ、できるだけ経時的に記載を行うこと。
c.事実を客観的かつ正確に記載すること。
(5)警察への届出
・医療過誤により死亡又は傷害が生じた場合又はその疑いがある場合には、病院長は速やかに所轄の警察署に届出を行う。
・警察署の届出を行うにあたっては、原則として事前に患者さん及びご家族に説明を行う。
(6)保健所及び済生会支部並びに本部への報告
医療事故が原因で患者さんが死亡する等重大な事態が発生した場合や、軽微な事故であっても医療事故防止に資すると思われる事案(他の医療機関においても同様の事故が発生する危険性がある事案等)は、所轄の保健所及び済生会支部並びに本部に報告する。
(7)医療事故の公表
社会に対する説明責任を果たすため、重大な医療事故が発生した場合は、速やかに別に定める「医療事故に関する公表基準」に基づいてこれを公表する。
(8)対応窓口の一元化と対応方法
・医療事故が起きた直後は当事者は冷静に判断したり、広く配慮する余裕がない場合が多いため、患者さん側の対応者は一元化しておく。
・対応窓口は原則として事務部長とする。
・医療事故は、施設側の対応や患者さんの諸事情により、紛争にならないケースや訴訟にまで発展するケースもあるので、これらを想定して対応する。
・対応は当事者が独自に判断するものではなく、医療安全対策会議の検討結果を踏まえ、組織としてどのように対応するかを決める。
(9)取材要請への対応
・医療事故に関して、取材要請があった場合、院長はマスコミ対応者を決める。
・取材要請に対する場合、患者さん及びご家族のプライバシーに充分配慮のうえ、院長、副院長、事務部長、看護部長及びマスコミ対応者等であらかじめ、公表内容、説明方法の検討を行う。この場合、事実関係を正確に公表することを基準とし、虚偽の説明を行うことは厳に慎む。
・マスコミ対応者は、各取材に対し統一的な対応を行うとともに、実際の取材において、あらかじめ検討した公表内容等を正確に説明することとし、憶測に基づいて発言を行わない。
(10)医療事故の再発防止
医療事故発生後できるだけ早い段階で、委員会において事故の再発防止について検討し、再発防止策を職員全員に周知徹底を図る。
◆医療機器の保守点検及び安全使用に関する体制◆
(1)医療機器安全管理責任者の配置
施設内における医療機器の保守点検及び安全使用に関する業務を統括するものとして、「医療機器安全管理責任者」を配属し、次の業務を行う。
・医療機器の添付文書、取扱説明書を保管する。
a.業者からの医療機器不具合情報等を管理し、医療機器を取り扱う職員に周知する。
b.医療機器の不具合情報について、施設長に報告を行う。
・定期的な点検が必要な医療機器について、保守点検計画を作成し、保守点検の実施状況等の記載を行う。業者に保守点検を委託している機器についても、保守点検の実施状況等の記録を保存する。
・新たな医療機器を購入する際には、医療機器取扱者を対象とした安全使用研修を行う。
・研修は、有効性、安全情報、使用方法、保守点検、不具合が発生した場合の対応、法令尊守すべき事項について行い、実施状況を記録する。
◆医療安全管理室設置要綱◆
(1)目的
この要綱は、医療安全管理委員会と連携のもと、より実効性のある医療安全対策を組織的横断的に推進するために必要な事項を定めるものとする。
(2)組織
医療安全管理を組織横断的に担う部署として、医療安全管理室を設置する。
・統括安全管理者 院長
・医療安全管理者 看護師(専従)1名
・各部署及び各部門に医療安全推進担当者を置き、医療安全の現場責任者としての役割を持ち、医療安全管理活動を推進する。診療部門は副院長、薬剤部門は薬剤部長、看護部門は看護部長、事務部門は事務部長、医療相談係は社会福祉士とする。
(3)所掌事務
・医療事故及びインシデントの収集、調査、分析に関すること。
・医薬品及び医療機器の安全使用及び管理体制の整備に関すること。
・医療事故防止策の立案及び周知に関すること。
・医療安全推進担当者との連絡調整に関すること。
・医療事故防止に係わる病院内の巡視、点検、評価、改善策、調査、見直しに関すること。
・医療事故に係わる教育、研修、啓発、広報に関すること。
・医療事故に係わるマニュアルの作成及び点検及び改訂に関すること。
・医療事故等に係わる診療録等記載の確認及び指導に関すること。
・医療安全等のネットワークに関すること。
・委員会の庶務に関すること。
・医療相談窓口担当者との情報交換をはかり、医療安全に係わる事象について支援する。
◆医療安全管理指針の閲覧に関する基本方針◆
本方針はホームページに掲載し、一般に開示する。また、患者さん等から閲覧の依頼があった場合にはこれに応ずるものとする。
◆附則◆
この指針は平成21年5月1日から施行する。
1.ヒヤリ・ハット報告の収集・分析・対策
インシデントレポートシステムにて医師、看護師、コメディカルのすべてのヒヤリ・ハット事例を収集し、医療安全委員会にて、分析及び対策を検討し、事故防止に努めています。
2.医療安全に関する現場の情報収集と実態調査
リスクマネージャーによるワーキンググループにて定期的にラウンドを行い、情報収集と実態調査を行い、業務改善に努めています。
3.医療安全マニュアルの見直しと徹底
医療安全マニュアルは、修正担当者グループにより、定期的に見直し、各部署における徹底に努めています。
4.医療安全に関する最新情報の把握と周知
各種医療安全情報やインターネット等最新情報を収集し、「医療安全管理室よりのお知らせ」をリアルタイムに発行し、周知に努めています。
5.医療安全に関する職員への啓発及び広報
医療安全に関する講演会を実施し、啓発及び広報に努めています。
6.医療安全に関する教育研修の企画及び運営
新規採用者の安全研修や職種別研修、全職員対象の安全研修等、安全研修を企画及び運営しています。
◆患者さん参加でさらに進める医療安全◆
患者さんのお名前を確認して、誤認を防止し、安全な医療を受けて頂くために、入院時患者さんにお名前を書いたリストバンドを装着して頂くようお願いしています。注射、処置、検査を行う時は、誤認を防止する為にお名前をご自分で言って頂くようお願いしています。
◆患者サポート室のご案内◆
当院における医療及びその他のご相談を患者さん及びご家族からお受けしております。
患者さん及びご家族からの相談や苦情をお聴きして状況の確認、現場への正確な内容の伝達を行い、患者さん及びご家族の不安や不満、心配事などの解決へと努めております。
1.相談受付、相談時間、相談方法
・相談担当者は患者サポート室が担当します。
・相談時間は月曜日〜金曜日の8:30〜16:30、土曜日8:30〜12:30(ただし、第2・第4土曜日を除く)です。
・ご相談は患者サポート相談窓口にて受付いたします。
・電話でのご相談もお受けいたします。
2.患者さん及びご家族からの相談及び苦情に応じます。
・医療行為、患者さんの権利、医療従事者の態度、接遇、施設、設備その他についてのご相談に応じます。
・相談内容によっては関係者から説明が受けられるように連絡調整を行います。
3.患者さんの権利宣言
*良質の医療を受ける権利
*選択の自由
*自己決定権(自分の生き方や生活についてを自由に決定する権利)
*意識喪失患者の代理人の権利
*法的無能力者の代理人の権利
*情報に関する権利
*秘密保持に関する権利
*健康教育を受ける権利
*尊厳性への権利
*宗教的支援を受ける権利
◆患者さん及びご家族参加による「安全で安心な医療」◆
患者さん及びご家族から寄せられた貴重なご意見を大切に、患者さん及びご家族参加による「安全で・安心な医療」を進めていきたいと思っております。